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第三十四話 日葵はどこ!? 目覚めた凜華

Auteur: 煉彩
last update Date de publication: 2026-07-23 20:30:03

「ここは……」

 凜華が目を開けると、見知らぬ天井が広がっていた。

 記憶を探ろうとするも、思考が働かず、身体も重く、息苦しさを覚える。自分がベッドの上で寝ていることだけはわかった。頭を動かし、左右を見渡す。

「病院だわ」

 自分に繋がれた点滴を見る。

(そうだ。私、具合が悪くなって……。それで、家の中で倒れて……)

 凜華の火照った顔からさっと血の気が引く。

(あの男、宗像涼真に連れて行かれたんだ……。日葵は!?)

 周囲を見る限り、日葵の姿はない。

(日葵、どこに行ったの? それにこの病室、一般の人が使える部屋じゃないわ)

 日葵の姿を探した凜華は、自分の病室の広さに驚く。凜華の部屋は個室になっていた。

 病室の広さとラグジュアリーな空間に包まれている、政治関係、芸能人、大手企業CEOだけが利用することができるVIP対応の個室。

 自分も医師であったがために、この独特な空間の雰囲気を凜華は知っていた。

「日葵……」

 凜華は上体を起こし、日葵を探そうとベッドから降りようと足を出した時だった。

<ガラッ>

 病室の扉がゆっくりと開く。

 病室に入ってきた人物と目が合った。

「琥珀く
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  • 私を刑務所へ送り込んだ夫が、今さら執着するなんて   第五十四話 凜華はずっと訴えていた……

    「直哉!お願い信じて」「私はやっていないの!」 約一年前、凜華が警察官に連れて行かれる中、直哉は凜華のことを一切かばうことはなかった。「病院の機密情報を持ち出して、それを売るとは。許さない。刑務所の中で反省するがいい」 家から庭に出て、警察車両に乗るまで、最後まで抵抗をしていた。 庭の芝生へ這いつくばり、警察官の足に掴まり、必死に自分ではないと抵抗していた姿は、直哉からすればとても惨めで無様だった。「直哉!」 何度名前を呼ばれたことだろう。 しかし夫は妻を擁護するわけもなく、妻の犯罪を認める。 聞き取りには「妻がやった可能性もあります。アリバイもありませんから」 淡々と答え、凜華が家にいた時間でさえも「彼女の行動は把握していません」 そう答えていた。 自分が経営している病院に対して、凜華が行った行為は許されることではない。経営者として、病院を守る側として、凜華を許すわけにはいかなかった。 裁判の時でさえ「彼女以外、できる人間はいません。病院のシステムをよく理解していましたから。彼女だったら簡単に情報を入手できると思います。裏取引の相手もいそうです」 そんな風に直哉は発言したのだ。 凜華は直哉の発言を聞き、涙を浮かべていた。 もしかしたら直哉が自分のアリバイを立証したり、擁護してもっと証拠を求めたりしてくれるかもしれないなどと、凜華は自分の夫に少しでも可能性を感じていたから。 それがことごとく打ちひしがれ、逆に罪を立証するような発言を凜華は受けた。「誰も信じない」 彼女が閉廷する時、誰にも聞こえないくらいの声量でぽつりこぼした言葉。 これが今に繋がっている。 逮捕直後から裁判中のことを直哉は思い出していた。 凜華は最初から最後まで「やっていない」と無罪を主張している。 どんなに質問されようが「私ではありません」と強く反抗していた。 裁判中、直哉を強く見つめる目線は「助けてほしい」「信じてほしい」今となっては、そんな風に感じられる。「凜華が冤罪だったとすれば、誰が犯人なんだ」 直哉は珍しく頭を抱えた。 情報屋の証言を完全に信じたわけではない。 ただ、本当に凜華が犯人だったとしたら、出所した時に、何かを伝えてくるはずだと直哉は振り返る。 凜華の性格であれば「本当にごめんなさい」「迷惑をかけて」「これからずっと

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     涼真の一言一言に重みを感じた凜華だった。 が――。「私だったら、好きな相手を冤罪で刑務所へ送ろうだなんて思わないわ」「それが守ろうとした結果でも……。冤罪で捕まって、私はすべて失ったの。刑務所での日々も毎日が辛かった。だから私はあなたのことを一生恨み続けると思う。消えない傷よ」 凜華は、出所してからはじめて冷静に涼真と向き合った。 涼真が自分のためを想ってとった行動は、許しがたいもの。 例え、直哉や唯衣から命を狙われていたとしても、もっと他に方法があったのではないかと感じた。「悪かった。本当に。一生をかけて償おう」「俺は諦めの悪い男だから、凜華が嫌だと言っても、まだまだ諦めないけどな」 昔からずっと一緒だった幼馴染の涼真。兄のように慕っていた。 憎い相手になったことは変わりない。しかし凜華の心が少しだけ、救われた瞬間だった。「桜庭直哉には気をつけろよ。あと、唯衣……。お前の義理の妹もだ。何かあったら連絡しろ」 社員寮へ到着し、凜華と日葵を降ろした涼真は、部屋へ帰る前に忠告をした。「あと、これはビジネスの話だ。もし考えてくれるのであれば――」 涼真と別れ、久しぶりに部屋へ入った。(病室の方がよっぽど綺麗ね。こんなカビ臭い衛生的に悪い部屋にいたら、また具合が悪くなってしまう)(私だけならまだいい。日葵の身体にも負担だわ) 久しぶりに帰ってきた部屋は、心地よく、安心できる部屋ではなかった。 湿気とカビ、どんなに掃除をしてもどこからか入り込むホコリにシミだらけの壁。(涼真、こんなにもたくさん日葵の物品を用意してくれたのね。私の服とかもあるけど) 涼真は降りる時、かなりの日用品を凜華の部屋へ置いて行った。 袋に入っており、中身が何かわからなかったが、開けてみるとすべて自分たちに必要な物だった。(これ、私が好きだったブランドの服じゃない? もう着ることはないと思ったのに) 凜華が昔愛用していたブランド服まで入っている。(私のこと、よく見てくれていたのね) 嬉しくはない、だけど嫌でもない、そんな複雑な感情を凜華は抱く。 夫である直哉は凜華のことには無関心で、きっと愛用していたブランド一つも答えられないだろう。(もう一度、この服が似合うような女性になることはできるのかな) 服を広げ、見つめる。シンプルなホワイトのワンピース

  • 私を刑務所へ送り込んだ夫が、今さら執着するなんて   第五十話 夫婦関係の破綻

    「えっ?」 凜華は、自分が直哉から嫌われていることは知っていた。夫婦関係が破綻していたのも。 関係性はわからないが、直哉が義妹と仲が良いのも知っていた。<離婚>を提案してくれる日は、いつなんだろうと凜華自身も考えていたこと。「あなた、そうやってまた嘘をついて……」「嘘ではない。俺がお前を桜庭から強引に離そうとしたのは、それが理由でもある」(この人のこと、信じてはいけない。耳を傾けちゃいけない) 涼真の話はまだ続く。「桜庭直哉と義妹の唯衣は、お互いに結ばれたいと思っていた。しかし現妻の妹と再婚したとなれば、桜庭家の評判が落ちるだろう。良い噂は広がらない」(それはそうね。全く違う人と結婚するってなれば、また話は違ってくると思う。だけど義妹と結婚なんて、結婚中から不倫をしていたのではないか?という悪いイメージに繋がってしまう)(私は可哀想な妻になり、いくら権力があろうが、不倫の疑いがある直哉の評判が落ちてしまうかもしれない)「だからって、何も殺そうだなんて考えないわよ」「あいつは医師だ。自然死に見せかけてお前を殺すことなんて、簡単にできることだぞ」 涼真の言葉に、ぞわぞわと寒気を感じた。「いや、桜庭涼真もそうだが。お前の義妹、あいつの方が危険な存在だ。あの二人が結託していた……。その可能性を考えろ?」(唯衣。ずっと家族だと思っていた。だけどいつからか私だけが取り残されていた) 直哉が唯衣を見つめる時、凜華には向けられたことのないような優しい眼差しであったことを思い出す。(たしかにあの二人にとって、私は邪魔な存在だった) ぎりっと凜華は奥歯を噛みしめる。(悔しい。私があの過酷な刑務所生活の中で、苦しくてたまらなかった時、あの二人は優雅な生活を送っていたんだろう)「俺は凜華にフラれて、正直、お前のことが憎かった時期もあった。だが、殺そうだなんて思ったことは一度もない。ライバルである桜庭にお前を盗られて、悔しくて悔しくてたまらなかったけどな」 凜華へ伝えたことは、涼真の本音だ。幼馴染でずっと一緒にいた存在。きっと凜華も自分を将来の相手へ選んでくれると思っていた。 が、それは叶わぬ夢で、勘違いしていた自分が恥ずかしかった。しかも凜華が最終的に結婚相手へ選んだ相手は、ライバルの桜庭直哉。それを知った時、涼真は気が狂いそうだった。 凜華に

  • 私を刑務所へ送り込んだ夫が、今さら執着するなんて   第四十九話 もしかしたらお前は、桜庭直哉に……

    「お世話になりました」 凜華の体調は回復し、無事退院することになった。 日葵を抱き上げ、社員寮へ帰宅しようとする凜華を涼真と琥珀は見送る。「俺が送って行く」 涼真は琥珀を病院へ残るように指示を出した。「一人で帰れます」 凜華は極力、涼真と二人きりになりたくはない。 今回のことで何か危害を加えられるという疑念は薄くなったが、それでも人生を壊されたきっかけを作った涼真を心から信じることはできなかった。「ダメだ。久しぶりに外へ出るんだろう。途中でまた体調が悪くなったらどうする?」「それにもう車は用意した」 涼真は凜華の荷物を持ち、いくぞと声をかける。 琥珀は寂しそうにその光景を見守ったままだ。(結局、今回の入院費と日葵ちゃんのベビーホテル代は宗像先生がすべて支払い済みだ。俺が何か手を出すことはなかった)(本当は俺が凜華さんを送って行きたい。だけど、今日の担当医は俺だ)「凜華さん、宗像先生に何かされそうになったらすぐに相談してください」「なんだと!?」 琥珀の言葉に涼真は、ムスッとした顔をし、睨みつける。「琥珀くん、ありがとう。助かったわ」 凜華が琥珀へ声をかけると、同時に日葵も声をあげた。(俺が凜華さんを支えていく気持ちに変わりはない。今日だけは宗像先生に良いところを譲るか) 琥珀は柔らかな視線を凜華へ送りながら、フッと口角を上げた。・・・「凜華」 珍しく使用人ではなく、涼真が運転する車の中、凜華は自分から会話をすることはない。「なに?」 返事はするものの、どこか緊張感が漂っている。 そんな凜華の雰囲気は涼真も感じていた。「俺のところへ来ないか? 不自由な生活はさせない」「またその話? 私は絶対にあなたのところなんて行かない。離婚もしていないのよ」「何度でも誘う。俺は諦めないからな」 ふぅと凜華は自分を落ち着かせるため、息を吐く。「今回のことは感謝している。日葵も大切にしてくれてありがとう」「だけど、あなたからされたことは、忘れることはないし、許すことはできないわ」 涼真は凜華からの<ありがとう>という発言に、一歩進むことができたのではないかと心の中で感動をしている。頑張れば、信用を取り戻すことができるのではないかと期待した。「俺はお前を桜庭直哉から離すために……」「何度も聞いた話よ? もう言わないで」

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